よみびと知らずの手記

日々云いたくても云えないような事や個人的な趣味等を、誰を気にするでも無く放言していくブログです。

降りる人が優先

電車に乗る時、思うことがある。私はそれを見る度に、何だか無性にやるせなくなる。


「あぁ。なんてみっともないんだろう。」

私はひとつ溜め息をつく。



電車が風を巻き上げながら、ホームに入ってくる。

徐々に速度を落としていき、決められた場所に、狂いもなく正確に止まる。

空気の漏れ出るような音をあげながら、ドアが開く。

その瞬間、降車する人の群れが勢いよくホームへと押し寄せる。

乗車しようとする人は、ドアの両端でその群れの過ぎるのを待つのだけれど、

しかし、

まだ人が完全に降りきる前なのにもかかわらず、

我先にとばかりに、掻き分けるようにして車内へ乗り込んで行く人がいた。

その人は、空いている席へと一直線に向かって行き、まるで椅子取りゲームをしているかのように、誰にも盗られまいと勢いよく座るのだった。


「あぁ。なんてみっともないんだろう。」

私はひとつ溜め息をつく。



揺れる電車で立ち続けるのは、案外疲れる。

これが仕事帰りであるなら尚更だ。

日中立ちっぱなしであったり、

或は取引先を汗だくになりながら歩いて回ったことを想像すると、

お疲れ様の一言も言ってあげたくなる。

だから、そういった行動を取ってしまう気持ちも理解できるのだけれど、

それでもやっぱり恥ずかしさから、私には真似できない。


電車に乗る人よりも降りる人が優先というのは、当然のことだと思う。

先に人が降りなければ、降りたい人は乗車してきた人に阻まれて降りられない。

車内に乗車する人のための十分なスペースが確保できない。

それに、ぶつかってホームと電車の間に物を落とす可能性がある。

ケガをする危険性もある。

だから、我儘に乗車しようとする人を見るのは、凄く嫌だ。

本当はその人に、

「そういう事をしては駄目ですよ」

と注意できれば良いのだけれど、臆病にも躊躇ってしまう。

周囲の目を気にしてしまう。

喧嘩になるだろうことを想像してしまう。


私は卑怯者かもしれない。


いつか、注意できるような人になれるのだろうか。